こんにちは、院長の前田です。
皆さんは、「ハイドロキノン」という美白成分を使ったことはありますか?
欧米では美白成分として広く使用されており、その歴史は20年以上に渡り、日本では2002年に認可されて以来、市販のスキンケア用品にも配合できるようになりました。
ネット通販や店頭で誰でも気軽に購入できるハイドロキノンですが、その効果や安全性をご存知でしょうか?
美白剤としてのハイドロキノンについて、効果やリスク、安全性について説明していきます。
シミの原因であるメラニン色素は、皮膚にあるチロシンが色素細胞により、酸化反応を受けることで生成されます。
通常、表皮内で作られたメラニン色素は肌のターンオーバーとともに排出されますが、メラニン色素の産生と排出のバランスが崩れると、メラニン色素が沈着して、シミと呼ばれる状態になります。
ハイドロキノンには、メラニン色素の生成に関わる酵素(チロシナーゼ)の働きの抑制や、メラニン色素を生成するメラノサイトの働きを弱めたりする働きがあります。
また、強い還元作用により、生成されたメラニンを薄くする作用も期待できます。
これらの作用により、新しいシミが出来るのを予防し、すでに出来たシミを薄くする美白効果をもたらし、その美白効果は、アスコルビン酸(ビタミンC)、アルブチン、エラグ酸の60~100倍にもなります。
老人性色素斑、肝斑、炎症後色素沈着(ニキビ跡、やけどの痕、湿疹の痕など)、雀卵斑(そばかす)などが適応となります。
肌の漂白剤ともいわれるハイドロキノンですが、全てのシミに対して美白効果があるわけではありません。
ハイドロキノンで効果があるのは、皮膚の浅いところにある表皮のシミです。
そのため、皮膚の深い部分にある真皮のシミや、表皮と真皮の間のシミに対しては、レーザー治療など他の治療が必要になります。
また、加齢によるシミや肝斑、慢性的な湿疹や火傷、ニキビの後に生じる色素沈着には、ハイドロキノン単体ではなく、基本的にトレチノインとの併用療法が推奨されています。
しかし、トレチノインを併用したとしても、ハイドロキノンはシミの万能薬ではありません。
トレチノイン・ハイドロキノン併用療法によって漂白効果が得られるシミは、ハイドロキノン単体使用と同様に、理論的には表皮のシミ(表皮の存在するメラニンやメラノサイト)になります。
平坦な茶色いシミは、比較的トレチノイン・ハイドロキノンの塗り薬の効果が得られる可能性が高いといえます。
ハイドロキノンの副作用には、赤み・乾燥・かゆみ等、また、メラノサイトに対しての細胞毒性もあります。
そのため、長期の使用により、メラノサイトの機能が低下して白斑を起こすことがあります。
強い副作用のイメージがあるハイドロキノンですが、4%程度の濃度のハイドロキノンであれば、期間を決めて使用することで副作用のリスクを抑えることができます。
ハイドロキノンによるシミ治療では、数か月の使用後に休薬期間を設けます。
皮膚科の美白治療では5~10%の濃度のハイドロキノンを使用することもありますが、個々の肌状態を医師が観察し、用法用量を守ることで、リスクを抑えながらシミ治療を行っていきます。
強い美白作用があるハイドロキノンは、使用時にいくつかの注意点があります。
☑ 使用前にパッチテストを行う
ハイドロキノンは皮膚への刺激やアレルギーのリスクがあるため、使用前に必ずパッチテストを行います。
当クリニックでは、お試し用のミニサイズをご用意していますので、事前にテストしてください。
テストせずに製品を購入して、お肌に合わなかった場合、使えずに無駄になってしまいます。
毛染め剤で接触性皮膚炎になった方は、ハイドロキノンでかぶれ等が起こりやすいかもしれません。
なお、ハイドロキノンの使用で肌が赤くなったり、刺激を感じたりした場合は、使用を中止してクリニックにご連絡ください。
☑ 紫外線対策を行う
シミ治療でハイドロキノンを使用している間は、日焼け止めで紫外線対策が必須です。
肌にとって大敵のイメージがあるメラニン色素ですが、本来は紫外線や摩擦刺激などから肌を守る働きがあります。
ハイドロキノンの治療により皮膚のメラニン色素が少なくなると、肌が刺激に対して無防備になりますので、夏のレジャーなどで強い紫外線を浴びる時には、日中にハイドロキノンを使用するのを避けた方が無難です。
☑ 冷暗所で保管する
ハイドロキノンは空気酸化や光分解しやすい特徴があります。
明らかに変色している場合は、使用を避けてください。
時々、一度に大量の処方を希望される患者様もいらっしゃいますが、上記の理由から1つずつの提供となります。
☑ 医師の指示を守る
ハイドロキノンは強い成分なので、誤った方法で使用すると、赤みや白斑など皮膚の症状が起こることがあります。
そのため、医師に『処方された濃度の薬剤を決められた期間だけ』使用することが大切です。
シミを消したい一心で、指示した以上の期間ハイドロキノンを使用すると、メラノサイトを破壊して白斑を起こすことがあります。
また、欧米では低濃度のハイドロキノンの長期使用による外因性組織黒変症も問題になっています。
2002年の規制緩和以降、ハイドロキノンが化粧品成分としてスキンケア用品に配合されるようになり、広く使用されるようになりました。
近年ではハイドロキノンを個人輸入し、自前のスキンケア用品に混ぜて使用する大変危険な例もみられます。
ハイドロキノンの強力な美白作用と副作用のリスクは表裏一体でもありますので、ハイドロキノンによるシミ治療を受けたい方は、皮膚科の専門医のいるクリニックで受けることをお勧めします。
化粧品の成分を見ていると、成分名のあとに「誘導体」がつくものがあり、ハイドロキノンにもハイドロキノン誘導体というのがあります。
ほぼ同じネーミングなので、効果も同じと思われがちですが、肌へのアプローチが異なります。
誘導体の中でも有名なのは、ビタミンC誘導体ですが、ビタミンCと化学式的にメインの部分(美白作用に関する部分)は同じで、それに付随する部分の化学式が違っています。
ビタミンC誘導体は肌に塗るとこの付随する部分が離れ、肌の中でビタミンCとして働くため、ほぼ同じ働きをしますが、ハイドロキノンの場合は、共通する部分がメインではない部分なので、効果が同じというより、似ている範囲にとどまります。
そのため、きちんとハイドロキノンの還元効果やパワフルな美白作用を求めるなら、ハイドロキノン誘導体ではなく、安定型ハイドロキノン配合タイプを使うとよいでしょう。